おニャン子クラブの名盤たち

夏休みは終わらない

おニャン子クラブはいつまでたっても古びるということを知りません。

『夕焼けニャンニャン』を食い入るように見て、ラストコンサートまでの一年間、おニャン子クラブに夢中になって追いかけた世代は、おニャン子クラブの解散から30年経った今でもおニャン子クラブと過ごした青春が忘れられずにいます。

もちろん、「現役」としておニャン子クラブを体験しなかった若い世代にも、おニャン子クラブは愛されていて、高い支持を受け、後追いの新たなファンを獲得しつづけています。

代々木公園で毎年行われている「フィルムコンサート」などは、当時の熱狂を忘れられなかった世代と、当時の熱狂は体験していない若い世代が交錯する時空を超えたイベントとして、おニャン子クラブの根強い人気を証明するようでもあります。

おニャン子クラブには名盤しかない

おニャン子クラブというアイドルが、現在にいたってもアクチュアルな存在として根強い人気を博している理由は、人それぞれであるとは思いますが、やはり、おニャン子クラブが残した「名盤」の魅力によるところが大きいのではないかと思います。

おニャン子クラブに名曲がなかったなら、当時の熱狂状態はうまれなかったでしょうし、現在まで続く根強い支持もなかったことでしょう。

おニャン子クラブといえば『セーラー服を脱がさないで』が有名ですが、おニャン子クラブを『セーラー服を脱がさないで』という一曲でしか知らないという状態は、おニャン子クラブの「氷山の一角」にすら触れていない状態であるといっていいでしょう。

おニャン子クラブが残した、『セーラー服を脱がさないで』以外の数々の名曲の魅力を知らないでいる、というのは、モーニング娘。でいうと『LOVEマシーン』、AKB48でいうと『ポニーテールとシュシュ』しか知らない、というのと同じくらいにもったいないことだと言えるでしょう。

おニャン子クラブが残した「名盤」を聴くことによって、日本の音楽の最も良質な部分に触れることになる、といっても過言ではないかもしれません。

『kick off』、『夢カタログ』、『panic the world』、『side line』、『circle』といったおニャン子クラブのオリジナルアルバムには、数々の名曲が収められています。

「一家に一枚」などという言葉は古臭く感じられるかもしれませんが、おニャン子クラブが残したオリジナルアルバムを所有することは、音楽の趣味と生活を豊かにすることと直結しているので、お金に余裕がある人はいますぐにでも購入しましょう。

おニャン子クラブには名曲しかない

おニャン子クラブの歌の制作陣のなかで、私が個人的に最も気に入っているのは山川恵津子です。

山川恵津子が関わった作品では、『避暑地の森の天使たち』『アンブレラ・エンジェル』などが特に好きですね。

山川恵津子は、渡辺美奈代や渡辺満里奈にも多数の名曲を書いていますので、オリジナルアルバムを聞いたあとは、ソロのアルバムを聴くこともオススメです。

秋元康と後藤次利のタッグも、やはり、おニャン子クラブを象徴するといいますか、なんだかんだ言っても最強タッグなのではないかと思います。

秋元康と後藤次利のタッグも、オリジナルアルバムだけでなく、おニャン子メンバーのソロアルバムで堪能できる作品が多いですから、あわせて、ぜひともおさえておきたいところです。

作詞・秋元康、作曲・後藤次利の作品でオススメを一曲だけ選ぶとなると、悩みに悩んだ末に、『circle』のディスク2に収録されている、渡辺美奈代とゆうゆ(岩井由紀子)の『割ってしまった卵』を選ぶことになりますが、おニャン子クラブに関しては「日替わり」で好きな曲が変わるので、これは暫定的なオススメでしかありません。

オリジナルアルバムの極私的なランキングも、日々めまぐるしく変動していますが、いまの気分でランキングを決めると、『side line』、『kick off』、『夢カタログ』、『panic the world』、『circle』の順番になるでしょうか。

おニャン子クラブにハマり、おニャン子クラブの名曲を愛好するようになると、「今日の自分はおニャン子のどの曲が好きだろうか」と考える日々が続きますし、聞き返すたびに何かしらの発見があるので、暇になるということがありません。

おニャン子クラブは歌声が良い

おニャン子クラブに対する批判として「素人くささ」を前面に押し出したことがあげられますが、個人的には、おニャン子クラブの「素人くささ」の魅力的な歌声がなかったなら、自分はおニャン子クラブの「歌」にここまでハマることはなかったのではないかと思います。

おニャン子クラブが登場する以前のアイドルの歌唱法は「歌謡曲」の歌い方ではあったけれども、それは自分が考える「アイドル」の歌声ではない、という認識が自分にはあります。

おニャン子クラブの登場によってアイドルというジャンルは革命的な変化を蒙ることになりましたし、それは現代のアイドルにまで影響が波及するような長い射程を持っています。

おニャン子クラブが音楽の中に持ち込んだ「素人くさい歌声」が持つ破壊力はすさまじいものがあり、女の子のリアリティに満ち溢れたなまなましい歌声なしには、当時のおニャン子クラブの爆発的な人気の発生もなかったのではないかと思います。

80年代のサブカルチャーでは「へたうま」と呼ばれる価値基準が提唱されて、「うまうま」や「うまへた」といった、技術的にはうまいとされている表現に対置されるような形で、最上位の「良さ」として重視されることになりました。

おニャン子クラブの「素人くささ」による歌声というのも、そのような「へたうま」最上位の時代とピッタリと合致していたのではないでしょうか。

もちろん、おニャン子クラブは全員が「へたうま」だったわけでもありません。

たとえば、初期の渡辺美奈代は「へたうま」の歌声としてアイドルの理想形ですが、立見里歌などは改めて聞いても「単なるへたな人」だったと思います。

ただ、立見里歌くらいの「へた」になるとさすがに笑えてしまうのであって、ニャンギラスや『国道渋滞8km』で立見里歌の歌を聴くと、「へたへた」が「うまへた(技術が高いだけでつまらないもの)」の一つ上にある価値基準であることを実感することができるのでオススメです。

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